猫の健康診断は年1回でいい?頻度・検査内容・費用の目安を解説【体験談あり】

猫の健康

「猫の健康診断って、いつから受ければいいの?」

子猫を迎えたばかりの方も、もう何年も一緒に暮らしている方も、一度は迷ったことがあるのではないでしょうか。うちの子はまだ若いから必要ない気がする。かといって、気づいたときには手遅れというのも怖い。そのあいだで判断がつかないまま、なんとなく先延ばしになってしまう——健康診断は、そういうテーマです。

この記事では、「何歳から」「年に何回」「いくらかかるか」を自分で決められるようになることをゴールにしました。頻度の目安、検査項目ごとに何が分かるのか、費用の内訳と優先順位、そして受けたあとの結果の使い方までをまとめています。

頻度については、アメリカ動物病院協会・アメリカ猫獣医師会(AAHA/AAFP)が2021年に公表したライフステージ指針と、日本の獣医師団体Team HOPEの推奨を、それぞれ出典を分けて確認しました。腎臓・心臓に関する記述は査読付き論文まで戻って確認しています。費用は、実際に料金を公開している動物病院のページを参照しました。

健康診断の出発点は「何歳になったら」ではなく「迎えた直後」です。年齢を待つ必要はありません。

  • ✅ 最初の機会はお迎え直後の健康チェック。ここが1回目にあたります
  • ✅ AAHA/AAFPの2021年指針は、すべての猫に最低でも年1回の診察を推奨しています
  • ✅ 同指針では10歳を超えた猫は最低6か月ごと。日本のTeam HOPEは7歳以上で年2回を推奨しています
  • ✅ 内容は血液検査と尿検査が土台。画像検査は年齢と状況に応じて足していきます
  • ⚠️ 持病がある猫、体重・食欲・飲水量に変化がある猫は、年齢の目安ではなくかかりつけの獣医師の指示に従ってください
  • ⚠️ 健康診断はペット保険の補償対象外です(予防目的の医療行為にあたるため)

  1. 1. 猫の健康診断は「いつから」受けるのか
    1. 1-1. 出発点は「迎えた直後の健康チェック」
    2. 1-2. 子猫期はワクチンと重なるため、受診回数が多くなる
    3. 1-3. 「若いから必要ない」がいちばんもったいない理由
  2. 2. 年齢別の頻度|2つの推奨を分けて読む
    1. 2-1. AAHA/AAFPのライフステージ区分(2021年)
    2. 2-2. 日本のTeam HOPEの推奨
    3. 2-3. 食い違って見えるが、対立しているわけではない
  3. 3. なぜ「元気なうち」に受けるのか|3つの根拠
    1. 3-1. 腎臓:数値が動くのは「4分の3」が失われてから
    2. 3-2. 心臓:見た目が健康な猫の14.7%に心筋症
    3. 3-3. 去年正常でも、今年正常とは限らない
  4. 4. 検査項目ごとに、何が分かるのか
    1. 4-1. 血液検査|腎臓・肝臓・貧血・炎症
    2. 4-2. 尿検査|腎臓・膀胱・結石
    3. 4-3. 便検査|寄生虫・消化管の状態
    4. 4-4. レントゲン検査|肺・心臓の大きさ・腹部
    5. 4-5. 超音波検査(エコー)|腹部・心臓
    6. 4-6. 口の中のチェック|歯周病
    7. 4-7. 体重測定と体型チェック
  5. 5. 費用の目安と、削るならどこから
    1. 5-1. 公開されている料金の例
    2. 5-2. 予算が限られるときの優先順位
    3. 5-3. 【重要】健康診断はペット保険の対象外です
  6. 6. 【体験談】我が家はいつ・何を受けているか
    1. 6-1. 誕生日に固定している理由
    2. 6-2. 実施している内容
    3. 6-3. 心エコーを毎年入れている理由
  7. 7. 受診前に準備しておくと良いこと
  8. 8. 結果は「ベースライン」として残す
  9. 9. どこで受けるか|かかりつけ医を決めておく
  10. 10. よくある質問(FAQ)
    1. Q1. 猫の健康診断は何歳から受けるべきですか?
    2. Q2. 元気そうなら受けなくてもいいですか?
    3. Q3. 全部の検査を受けないといけませんか?
    4. Q4. 病院に行くだけで猫が体調を崩しそうです
    5. Q5. 健診で異常が見つかったらどうなりますか?
  11. まとめ
  12. 出典・参考文献

1. 猫の健康診断は「いつから」受けるのか

結論から書きます。始まりは、猫を迎えた直後です。

1-1. 出発点は「迎えた直後の健康チェック」

ペットショップ、ブリーダー、保護団体。どこから迎えた場合でも、最初の1〜2週間のうちに一度動物病院で診てもらうことが、実質的な1回目の健康診断になります。確認するのは、体重の増え方、寄生虫の有無、心音、先天的な異常の有無といった点です。

迎えた直後は、その子の「もともとの状態」を記録できる唯一のタイミングでもあります。迎え先によって事前にどこまで検査が済んでいるかは変わるので、受け取った書類も持参すると相談がスムーズです。

→ 猫のお迎え方法|ペットショップ・ブリーダー・保護猫の違いと選び方【実体験あり】

1-2. 子猫期はワクチンと重なるため、受診回数が多くなる

1歳になるまでは、ワクチン接種や去勢・避妊手術の相談で病院に行く機会が自然と増えます。そのたびに体重測定と身体検査が行われるため、意識しなくても「見てもらっている」状態になります。

何を何回接種するのか、成猫になってからの頻度はどうかは、国際基準をもとにこちらで整理しました。

→ 【獣医師基準】WSAVAの猫ワクチンとは?毎年接種は必要?頻度・種類・リスクまで完全解説

子猫の時期にいちばん情報量が多いのは、体重の増え方です。週単位でどう増えているかが、そのまま健康のサインになります。

→ 子猫の体重推移まとめ|生後〜1歳までの理想体重表と「増えないとき」の見分け方

1-3. 「若いから必要ない」がいちばんもったいない理由

結果票に印刷されている基準値は「多くの猫が収まる範囲」であって、その子に最適な値ではありません。下寄りが定位置の猫もいれば、上寄りが定位置の猫もいます。

健康なときのデータが残っていれば、次の健診で「基準値内かどうか」ではなく「その子のいつもの値から動いたかどうか」で見られます。この比較対象を作れるのは、健康なうちだけです。

ここまでのまとめ:健康診断は「何歳から」ではなく、迎えた直後から始まっています。子猫期はワクチンなどで受診機会が多く、その記録がそのまま将来の比較対象になります。


2. 年齢別の頻度|2つの推奨を分けて読む

「猫は7歳からシニアだから年2回」という説明をよく見かけます。この数字がどこから来ているのかを整理しておきます。国際的な指針と日本の獣医師団体の推奨は、実は少し違います。

2-1. AAHA/AAFPのライフステージ区分(2021年)

アメリカ動物病院協会とアメリカ猫獣医師会が2021年に公表したガイドラインでは、猫のライフステージを次のように定義しています。

ライフステージ年齢同指針が示す受診頻度
Kitten(子猫)誕生〜1歳すべての猫に最低でも年1回。個々の状況に応じて増やす
Young adult(若い成猫)1歳〜6歳
Mature adult(中年期)7歳〜10歳
Senior(高齢期)10歳超最低6か月ごと。慢性疾患がある場合はさらに頻回に
出典:2021 AAHA/AAFP Feline Life Stage Guidelines

ここで注意したいのは、この指針が「シニア」と呼んでいるのは10歳を超えてからだという点です。7歳〜10歳は「中年期(mature adult)」として、年1回以上という扱いになっています。

2-2. 日本のTeam HOPEの推奨

一方、日本で犬猫の健康診断を推進している獣医師団体Team HOPEは、次のように推奨しています。

  • 0歳〜6歳……年に1回
  • 7歳以上……年に2回
  • 0歳から、血液検査・尿検査・レントゲン検査の受診を推奨

同団体は、猫の7歳を「人間でいえば50歳近い年齢」と説明しています。日本で「7歳からシニア、年2回」という説明が広く使われているのは、こちらの推奨が背景にあります。

2-3. 食い違って見えるが、対立しているわけではない

2つを並べると、7歳〜10歳の扱いが違って見えます。ただ、AAHA/AAFPの指針も「最低でも年1回」と書いているのであって、年1回が上限だとは言っていません。同指針には「個々の必要性に応じて頻度を増やす」という前提が置かれています。

実務的には、次のように考えると整理しやすいと思います。

年齢最低ライン余裕があれば
1歳〜6歳年1回—
7歳〜10歳年1回年2回(Team HOPEの推奨水準)
10歳超年2回体調の変化があればその都度

ただし、これはあくまで健康な猫の目安です。持病がある猫、投薬中の猫、最近やせてきた猫については、この表ではなく獣医師の指示が優先されます。

ここまでのまとめ:国際指針は「全猫に最低年1回、10歳超は6か月ごと」、日本のTeam HOPEは「7歳以上で年2回」。どちらも年1回を下限としている点は共通しています。


3. なぜ「元気なうち」に受けるのか|3つの根拠

猫は体調不良を隠す動物です。とはいえ「隠すから」だけでは、年1回という頻度の説明にはなりません。もう少し具体的な根拠を3つ挙げます。

3-1. 腎臓:数値が動くのは「4分の3」が失われてから

腎臓には余力があります。一部が働かなくなっても、残った部分が肩代わりするため、体はしばらく困りません。

⚠️ 老廃物の排泄能力は、機能するネフロン(腎臓の最小単位)のおよそ4分の3が失われるまで保たれるとされています。尿を濃縮する力は、その手前、約3分の2が失われたあたりで落ち始めます。

つまり「クレアチニンが正常」は「腎臓が無傷」という意味ではありません。まだ4分の3は失われていない、に近い意味です。だからこそ、症状が出る前から数値を取っておくことに意味があります。

→ 猫の慢性腎臓病とは?初期症状・検査・新薬AIMまで解説

3-2. 心臓:見た目が健康な猫の14.7%に心筋症

これは腎臓に限った話ではありません。

イギリスの保護施設にいた、見かけ上健康な猫780頭に心エコー検査を行った研究(CatScan研究)では、14.7%に肥大型心筋症(HCM)が見つかりました。およそ7頭に1頭という割合です。

この研究が示したのは「症状がなくても心臓の病気を持っている猫が一定数いる」ということです。一方で、この780頭は保護施設の猫であり、日本の家庭猫にそのままの割合が当てはまるとまでは言えません。

→ 猫の突然死を防ぐ|7匹に1匹に潜む心臓病「肥大型心筋症(HCM)」の見つけ方

3-3. 去年正常でも、今年正常とは限らない

「1回受けて問題なかったから、しばらくは大丈夫」と考えたくなります。ここに直接答えている研究があります。

先ほどのCatScan研究の猫のうち107頭を、その後中央値5.6年にわたって追跡した研究(CatScan II)です。

  • 最初の検査で心臓が正常だった68頭のうち、19頭が追跡期間中に肥大型心筋症を発症した
  • グループ全体の有病率は、19.6%から37.4%に上昇した

この研究から言えるのは、「去年の検査が正常だったこと」は「今年も正常であること」を保証しないということです。健康診断が1回きりのイベントではなく、繰り返す意味があるのはここにあります。

ただし、言えないこともあります。この107頭はイギリスの保護施設出身の猫で、追跡できた個体に偏りがある可能性も残ります。「猫の何割が生涯でHCMになる」と一般化できる数字ではありません。

ここまでのまとめ:腎臓は約4分の3が失われるまで数値が動かず、心臓は見かけ上健康な猫の14.7%に異常が見つかりました。さらに、最初正常だった猫が数年後に発症した例も報告されています。「元気だから受ける」が正しい順番です。


4. 検査項目ごとに、何が分かるのか

動物病院によって内容は異なります。代表的な検査と、それぞれで見ているものを整理します。

4-1. 血液検査|腎臓・肝臓・貧血・炎症

健診の中心になる検査です。腎臓(BUN・クレアチニン・SDMA)、肝臓、血糖、貧血の有無などを確認します。

覚えておきたいのがSDMAという項目です。慢性腎臓病の猫21頭を振り返って調べた研究では、21頭中17頭でSDMAがクレアチニンより先に基準値を超え、その差は平均17か月(1.5〜48か月)でした。SDMAが上がった時点で、腎臓のろ過能力は平均して約40%低下していたと報告されています。

ただしこれは21頭という小規模な後ろ向き研究です。すべての猫で17か月早く分かる、という意味ではありません。それでも、健診にSDMAが含まれているかどうかは確認する価値があります。

また7歳以降は、甲状腺ホルモン(T4)の追加が選択肢になります。日本の高齢猫112頭を対象とした調査では、10頭(8.9%)が甲状腺機能亢進症と診断されました。2002年の報告で規模も大きくありませんが、日本の猫を対象としたデータのひとつです。

結果票の読み方は、こちらで詳しく解説しました。

→ 猫の血液検査の数値の見方|見落とされがちな項目を獣医論文で解説

4-2. 尿検査|腎臓・膀胱・結石

血液検査と組み合わせて初めて意味が出る検査です。とくに尿比重は、腎臓が尿を濃縮する力を見る指標になります。

一般には、濃縮する力のほうが老廃物を排泄する力より先に落ちるとされています。ただし猫では例外も指摘されていて、糸球体の病気では血液の数値の上昇が先に来ることもあります。どちらか一方だけで腎臓を評価するのは難しい、と考えるのが実際に近いようです。結晶の有無や潜血も分かるため、尿路結石の早期発見にもつながります。

→ 猫の尿路結石とは?2大タイプの違いと今日からできる予防法

尿が濃くなりやすいかどうかは、日々の水分摂取とも関係します。

→ 猫のドライフードだけは危険?水分と腎臓・尿路の関係を論文で徹底解説

なお、トイレでの様子がふだんと違う場合は、健診を待たずに相談してください。とくにオス猫がトイレに何度も通うのに尿が出ていない場合は緊急です。

→ 猫がおしっこを失敗する原因と対策|粗相を防ぐトイレ環境7つの見直し方【論文・ガイドライン確認】

4-3. 便検査|寄生虫・消化管の状態

寄生虫や原虫の有無を確認します。慢性的な下痢が続いている場合、顕微鏡検査では見つからないこともあり、必要に応じてPCR検査が検討されます。我が家でも、顕微鏡では出ずPCRで判明したケースがありました。

→ 猫のトリコモナス症|下痢が治らない…治療費・投薬・完治までの実体験記録

日々の便の状態も、健康を知る手がかりになります。

→ 猫のうんちの色・形・回数でわかる健康サイン|黒い便・血便・便秘は何日で病院?

4-4. レントゲン検査|肺・心臓の大きさ・腹部

肺に水がたまっていないか、心臓の大きさ、腹部の臓器の輪郭などを確認します。Team HOPEが0歳から推奨している3項目のひとつでもあります。

ただし初期・軽症の心筋症を見つけるのは苦手で、心臓病があっても正常に写る猫がいます。「レントゲンが正常だから心臓は大丈夫」とは言い切れません。

4-5. 超音波検査(エコー)|腹部・心臓

腹部エコーでは、腎臓の内部構造、肝臓、膀胱、腸などを画像で確認できます。数値だけでは分からない変化を捉えられるのが強みです。

心エコーは、心臓の壁の厚さや左心房の大きさを直接測れる検査です。肥大型心筋症の診断は、この検査によって行われます。

ここで押さえておきたいのは、心雑音の有無だけでは心臓の状態を判断できないことです。呼吸困難で救急に運ばれた猫258頭を調べた研究では、原因が心臓だった猫のうち心雑音が聴こえたのは31%(59頭中18頭)にとどまり、心臓が原因ではない猫の10%にも雑音が聴こえていました。救急症例の数字ではありますが、「雑音がないから安心」とは言えないことが分かります。

4-6. 口の中のチェック|歯周病

見落とされがちですが、猫では非常に多い問題です。しかも歯周病は口の中だけの話にとどまらず、全身への影響が指摘されています。

→ 猫の歯周病は腎臓病の原因になる?17万頭の獣医学研究でわかった口と全身の関係

家庭でのケアについてはこちらです。

→ 猫の歯磨きのやり方と頻度|完璧じゃなくていいデンタルケア入門

4-7. 体重測定と体型チェック

地味ですが、費用ゼロでもっとも情報量の多い項目です。前年と比べて体重がどう動いたかは、多くの病気の入口になります。

数値と同時に、手ざわりで体型を確認しておくと、家庭でのチェックにも活かせます。

→ 猫の肥満は病気のもと|見分け方と正しいダイエットの原則

ここまでのまとめ:血液と尿は組み合わせて意味を持ちます。画像検査は数値で見えないものを補いますが、レントゲンで初期の心筋症は見つけにくく、心雑音の有無も判断材料にはなりません。


5. 費用の目安と、削るならどこから

費用は検査内容と病院によって大きく変わります。「相場は〇円」と一言でまとめると誤解を招くため、実際に料金を公開している動物病院の例を並べます。

5-1. 公開されている料金の例

内容料金(税込)病院
血液検査(生化学14項目+CBC)8,000円フジタどうぶつ病院
血液検査(6+10項目)7,480円ファニメディック
上記+SDMA・尿中アルブミン11,000円フジタどうぶつ病院
血液検査+胸腹部レントゲン+腹部エコー16,500円ファニメディック
心臓健診コース13,200円〜フジタどうぶつ病院
全身ドック(血液22項目・レントゲン・腹部/心臓エコー・心電図・尿便検査)28,600円ファニメディック
各病院の公開料金ページより(2026年8月時点/キャンペーン価格を含む)。診察料が別途必要な場合があります。

ざっくり言えば、血液検査だけなら1万円前後、画像検査を足すと1万5千円〜2万円台、フルチェックで3万円前後という並びになります。地域や設備によって上下しますので、予約時に見積もりを確認してください。

5-2. 予算が限られるときの優先順位

毎年フルチェックは負担が大きい、という方も多いはずです。受けないより、内容を絞ってでも毎年続けるほうが価値があります。経年比較ができるからです。

優先度項目削ると見えなくなるもの
1体重・身体検査・問診すべての比較の起点。ここは削れません
2血液検査腎臓・肝臓・貧血・血糖の推移
3尿検査尿の濃さ、結晶、潜血。血液だけでは補えません
4レントゲン肺・心臓の大きさ・腹部の輪郭(Team HOPEは0歳から推奨)
5腹部エコー・心エコー数値や輪郭では分からない内部構造。心筋症の診断はここでのみ可能

「基本検査は毎年、画像検査は隔年」という組み方も現実的です。どこまでやるかは、年齢・これまでの結果・気になっている症状をふまえて、獣医師と相談して決めてください。

5-3. 【重要】健康診断はペット保険の対象外です

誤解されやすい点なので、はっきり書いておきます。ペット保険は「ケガや病気の治療」を補償するものです。

アニコム損保は公式サイトで、補償が適用されない例として「ワクチン接種、ノミ・ダニ・フィラリア予防、マイクロチップの装着、症状がない場合の耳掃除やスケーリング、去勢・避妊手術、妊娠出産、健康診断」を挙げています。

ただし、健診で異常が見つかってそこから治療に移った場合、その治療費は補償の対象になり得ます。また、見つかった病気が「加入後に発症したもの」と扱われるかどうかは、加入時期との関係で変わります。健康なうちに加入しておくほうが、選択肢は広くなります。

→ 猫のペット保険の選び方|比較で見るべき6つのポイントと加入前の注意点

ここまでのまとめ:血液検査だけなら1万円前後、フルチェックで3万円前後が公開料金の目安です。削るなら画像検査から。健康診断そのものは保険の対象外ですが、そこから治療に移れば対象になり得ます。


6. 【体験談】我が家はいつ・何を受けているか

6-1. 誕生日に固定している理由

我が家では、誕生日のタイミングで毎年1回受けるようにしています。

日付を固定するメリットは2つあります。ひとつは忘れにくいこと。「そろそろかな」と考えているうちに1年半経っていた、ということが起こりません。

もうひとつは、前年と同じ条件で比較できることです。季節がずれると、体重も食欲も微妙に変わります。

6-2. 実施している内容

  • 血液検査
  • 尿検査
  • 腹部エコー
  • レントゲン
  • 聴診+心エコー

いわゆる「フルチェック」に近い内容です。費用はかかりますが、数値と画像の両方で確認できるので、私自身は納得して続けています。

6-3. 心エコーを毎年入れている理由

我が家はノルウェージャンフォレストキャットとサイベリアンの2匹です。以前は「大型種だから」と説明していましたが、根拠を確認し直したので書き直します。

肥大型心筋症の原因となる遺伝子変異が確定しているのは、現時点ではメインクーンとラグドールです。猫の心筋症を扱った総説には「雑種の猫が最も多く罹患している」とも明記されています。純血種だけの病気でも、大型種だけの病気でもありません。

ノルウェージャンフォレストキャットに限っては根拠があります。53頭を心エコーで調べた研究で13頭(25%)に軽度の左室肥大が見つかり、871頭の血統解析から家族性の心筋症が示唆されました。一方、サイベリアンについて同等の研究は見つけられませんでした。

結局、2匹とも毎年心臓を見てもらっているのは品種が理由ではありません。症状がなくても持っている猫がいて、去年正常でも今年は分からないからです。「うちは大丈夫」という油断がいちばん危うい、と考えています。


7. 受診前に準備しておくと良いこと

ちょっとした準備で、健診の情報量は大きく変わります。

  • 尿・便を持参できるか確認する……採取方法と持参可能な時間は病院によって違うので、予約時に聞いておきます
  • 寝ているときの呼吸数を数えて動画に残す……病院では呼吸が速くなるのが当たり前です。自宅の様子を伝えられるのは飼い主だけです
  • 気になることをメモしておく……診察室では緊張して忘れがちです
  • 前回の結果を持っていく……病院を変えた場合はとくに重要です
  • キャリーは前日から出しておく……「キャリー=病院」と学習させないための工夫です

呼吸数の数え方と目安については、こちらで解説しています。

→ 猫が鼻をひくひくさせて呼吸するのは大丈夫?病気と受診の目安を解説


8. 結果は「ベースライン」として残す

結果を残しておいて初めて、翌年の比較ができます。

  • 検査結果の用紙は捨てずに保管する(写真に撮っておくのも有効です)
  • 体重と主要な数値だけでも記録に残す
  • 受けた検査の内容も記録しておく(翌年、同じ内容で比較するため)

記録の残し方と、転院時に実際に役立った場面はこちらにまとめました。

→ 猫のお薬手帳は必要?病院記録の残し方と実体験からわかる重要性【保存版】

体重や排泄回数は、手動で記録し続けるのが難しい項目です。自動で残す方法もあります。

→ Catlog Boardとは?猫の健康管理を「見える化」するスマートデバイス徹底解説


9. どこで受けるか|かかりつけ医を決めておく

健康診断は、かかりつけの動物病院を決めるきっかけにもなります。毎年同じ病院なら経過を続けて見てもらえますし、同じ機器・同じ基準値で測れるという実務的な利点もあります。

→ 猫のかかりつけ医の探し方|失敗しない7つのチェックポイント


10. よくある質問(FAQ)

Q1. 猫の健康診断は何歳から受けるべきですか?

迎えた直後の健康チェックが最初の機会になります。その後は年1回が下限です。若いうちの結果こそが比較の基準として価値を持つので、「若いから必要ない」ということはありません。

Q2. 元気そうなら受けなくてもいいですか?

むしろ元気なうちに受ける意味が大きいです。腎臓は機能するネフロンの約4分の3が失われるまで血液の数値が動きませんし、心筋症も初期は無症状です。「元気だから受ける」が正しい順番だと考えています。

Q3. 全部の検査を受けないといけませんか?

そんなことはありません。優先度をつけるなら、体重・身体検査を土台に、血液検査と尿検査が基本です。そこに年齢や気になる症状に応じて画像検査を足していきます。何を受けるかは獣医師と相談して決めてください。

Q4. 病院に行くだけで猫が体調を崩しそうです

切実な悩みだと思います。キャリーを普段から部屋に出しておく、中でおやつを与えるといった慣らしを、必要になる前に済ませておくと負担が減ります。移動が大きなストレスになる猫の場合は、往診に対応している病院を探すのも選択肢です。負担の程度は個体差が大きいため、かかりつけの獣医師に事前に相談しておくと進めやすくなります。

Q5. 健診で異常が見つかったらどうなりますか?

再検査や追加の検査で確認したうえで、治療や経過観察の方針が決まります。健診で見つかる異常の多くは、まだ症状が出ていない段階のものです。早く見つかったこと自体が良い知らせだと考えてください。数値の読み方は血液検査の記事もあわせてご覧ください。


まとめ

  • 出発点は迎えた直後。年齢を待つ必要はありません
  • AAHA/AAFPの2021年指針は全猫に最低年1回、10歳超は最低6か月ごと
  • 日本のTeam HOPEは7歳以上で年2回を推奨。どちらも年1回が下限という点は共通
  • 腎臓は機能するネフロンの約4分の3が失われるまで血液の数値が動かない
  • 去年正常でも今年正常とは限らない(CatScan II:正常だった68頭中19頭が発症)
  • 基本は体重+血液検査+尿検査。削るなら画像検査から
  • 公開料金の目安は、血液検査のみ1万円前後、フルチェックで3万円前後
  • 健康診断はペット保険の対象外。ただし治療に移れば対象になり得る
  • 結果はベースラインとして残す。価値が出るのは翌年以降

不安な症状がある場合は、健診の予定を待たずにかかりつけの獣医師に相談してください。とくに呼吸が速い、食べない、尿が出ていないといったサインは、次の健診まで様子を見てよいものではありません。

すべてを完璧にする必要はありません。内容を絞ってでも毎年続けることが、いちばん確実な予防になります。まずは今年の1回から始めてみてください。


出典・参考文献

  • Quimby J, Gowland S, Carney HC, DePorter T, Plummer P, Westropp J. 2021 AAHA/AAFP Feline Life Stage Guidelines. Journal of Feline Medicine and Surgery. 2021;23(3):211-233. doi:10.1177/1098612X21993657
    → この記事ではライフステージの年齢区分(〜1歳/1〜6歳/7〜10歳/10歳超)と受診頻度(全猫に最低年1回、10歳超は最低6か月ごと)の根拠として使用
  • Team HOPE「知っておきたい!猫の健康診断」/「健康診断項目リスト」(公益的な獣医師団体による情報提供ページ)
    → この記事では日本における推奨頻度(0〜6歳 年1回/7歳以上 年2回)と、0歳からの血液・尿・レントゲン検査の推奨の根拠として使用
  • eClinPath (Cornell University College of Veterinary Medicine). Urinalysis: Concentrating ability.
    → この記事では高窒素血症が機能ネフロンの約4分の3の喪失で生じること、濃縮能低下が約3分の2で生じること、および猫における例外の根拠として使用
  • Hall JA, Yerramilli M, Obare E, Yerramilli M, Jewell DE. Comparison of Serum Concentrations of Symmetric Dimethylarginine and Creatinine as Kidney Function Biomarkers in Cats with Chronic Kidney Disease. Journal of Veterinary Internal Medicine. 2014;28(6):1676-1683. doi:10.1111/jvim.12445(PMID: 25231385)
    → この記事ではSDMAが21頭中17頭でクレアチニンに平均17か月先行したこと、上昇時のGFR低下が約40%であったことの根拠として使用。※慢性腎臓病の猫21頭を対象とした後ろ向き研究であり、規模は小さい点に注意
  • Payne JR, Brodbelt DC, Luis Fuentes V. Cardiomyopathy prevalence in 780 apparently healthy cats in rehoming centres (the CatScan study). Journal of Veterinary Cardiology. 2015;17(Suppl 1):S244-S257. doi:10.1016/j.jvc.2015.03.008(PMID: 26776583)
    → この記事では見かけ上健康な猫の14.7%(95%CI 12.3-17.4%)に肥大型心筋症が見つかったことの根拠として使用
  • Novo Matos J, Payne JR, Seo J, Luis Fuentes V. Natural history of hypertrophic cardiomyopathy in cats from rehoming centers: The CatScan II study. Journal of Veterinary Internal Medicine. 2022;36(6):1900-1912. doi:10.1111/jvim.16576
    → この記事では中央値5.6年の追跡で、当初正常だった68頭中19頭が肥大型心筋症を発症し、有病率が19.6%から37.4%へ上昇したことの根拠として使用
  • Abboud N, Deschamps JY, Joubert M, Roux FA. Emergency Dyspnea in 258 Cats: Insights from the French RAPID CAT Study. Veterinary Sciences. 2025;12(3):242. doi:10.3390/vetsci12030242
    → この記事では心臓が原因の呼吸困難の猫でも心雑音が聴取されたのは31%(59頭中18頭)にとどまり、非心臓性の猫の10%にも雑音が聴かれたことの根拠として使用
  • Kittleson MD, Côté E. The Feline Cardiomyopathies: 1. General concepts. Journal of Feline Medicine and Surgery. 2021;23(11):1009-1027. doi:10.1177/1098612X211021819
    → この記事では原因変異が確定しているのはメインクーンとラグドール(MYBPC3)であること、雑種の猫が最も多く罹患していることの根拠として使用
  • März I, Wilkie LJ, Harrington N, et al. Familial cardiomyopathy in Norwegian Forest cats. Journal of Feline Medicine and Surgery. 2015;17(8):681-691. doi:10.1177/1098612X14553686(PMID: 25359788)
    → この記事ではノルウェージャンフォレストキャット53頭中13頭(25%)に軽度左室肥大が認められ、871頭の血統解析から家族性心筋症が示唆されたことの根拠として使用
  • 「大阪府および中国地方における猫の甲状腺機能亢進症の発生状況」日本獣医師会雑誌. 2002;55(5):289-292. doi:10.12935/jvma1951.55.289
    → この記事では日本の高齢猫112頭中10頭(8.9%)が甲状腺機能亢進症と診断されたことの根拠として使用。※2002年の報告であり、対象数も限られる点に注意
  • アニコム損害保険株式会社「ペット保険で補償の対象外となるケースについて」(公式サイト)
    → この記事では健康診断・ワクチン接種・去勢避妊等が補償対象外であることの根拠として使用
  • フジタどうぶつ病院「健康診断メニュー・料金」/ファニメディック動物医療グループ「猫の健康診断」(各動物病院の公開料金ページ、2026年8月時点)
    → この記事では健康診断コースの実際の料金例の根拠として使用。※料金は改定される可能性があります
  • 公益社団法人日本獣医師会「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査 調査結果」(令和5年9月)
    → 参考として確認。健康診断(1日ドック)の料金に関する記載がありますが、犬猫を合わせた調査であり、統計上の性質を原典で確認できなかったため、本文の金額には使用していません

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。ここに書いた頻度や検査項目は健康な猫を想定した一般的な目安であり、個々の猫に何が必要かは記事だけでは判断できません。検査内容や頻度、気になる症状については、かかりつけの獣医師にご相談ください。費用は各動物病院が公開している金額を参照した例であり、地域・病院・時期によって異なります。

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